酒屋の個性は「棚」でわかる。あれもこれも気になり長居してしまうから、余裕をもって出かけたい。
地下鉄薬院大通駅近く、通りに面した小じんまりした店である。店長を入れて3人のスタッフは多すぎないかと思ったが、謎はすぐ解けた。お客さんの応対に時間をかけるのだ。「友人宅への手土産に女性受けするお酒を。予算は2000円位で目新しいもの」といった要望も、酒の好みはもちろんメンバーや料理などを聞いて数本をセレクト。可能な限り試飲をすすめて一本を選ぶのが、だいとう酒店の流儀である。
ちなみに酒店スタッフが飲んべえとは限らない。昨年9月から働く前田さんは、自称・お酒を飲む雰囲気が好きな食いしん坊。「これは肉じゃがなんかの家庭料理にもぴったりですよ」と、主婦目線で具体的なアドバイスを心がけている。一方で開店時から勤務する安部さんは、お酒はすべて好き、特にワインに目がないという期待通り(?)の酒豪である。おいしい酒があればすかさず蔵元に取り扱いを交渉し、充実した棚作りに励んできた。「家で飲むならボックスワインもいいですよ。真空パックで飲み残しも気にならず、処分も簡単。安かろう悪かろうじゃない、おすすめがあります」。力強い言葉に、つい手が伸びるという按配である。
そもそも「だいとう酒店」は、タクシーや不動産業などを営む大稲グループが運営する店だ。3年前に薬院に移転するにあたって「情報発信」「地元密着」「価格競争をしない」という方針を打ち出し、「ビールを扱わない」異色の酒店としてオープンした。地元住民へのアンケートで「日本酒はあまり飲まない」という声が多かったことから、社員一丸となって「通でなくとも愛飲できる日本酒づくり」にも取り組んだ。こうして生まれた「薬院浄水通り」は、ごくりと飲める軽い日本酒という新機軸が受け、この夏は新パッケージも発売された。
続く転機は、今やこれ目当てのお客も多い「レディー酒コーナー」だろう。「お酒といえば40〜50代の男性という意識が強かったのですが、求められていたのは、気軽にお酒を楽しみたいという女性のための情報発信だったんです」。長野店長がいうように、一人でも入店でき、自分のペースで酒が選べる雰囲気を演出することで女性客のリピートが増え、つられて男性客も増えた。「飲めばわかる」という思いから、試飲を充実させたことも功を奏した。
「酒は人生の愉しみ。その人生の主役であるお客様の生活シーンにあわせた酒選びをサポートするのが酒屋です」。不況風にあおられ価格の安さを競う店がめだつ昨今、小売業として至極まっとうな姿勢が、新鮮でまぶしく映る。
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「yakuin浄水通り」の日本酒らしからぬ軽い飲み口に、驚いたり感心したり。「飲みすぎないよう注意しなくちゃ」

「先日、歌舞伎座にいってね…」。試飲とはいえ、おいしいお酒があれば会話もはずむ。「なんだか角打ちにいるみたい」

2009年7月、女性向けの新パッケージで発売された「yakuin浄水通り」(1365円)。「仕事を終えた女性が家でくつろぐ時間」をイメージした癒し系デザインが、ヘルシーで美容効果の高い日本酒に似合う。

「yakuin浄水通り」を手に。(左から)パッケージデザインを手がけた大稲グループ社員の浦さん、前田さん、長野店長、安部さん。




